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手乗り龍のしつけ方第七話 進化の系図

2009-10-21 | 13:06

ここに掲載する物語は完全なるフィクションであり、実在するいかなる個人、団体とも関係ありません。

 

手乗り龍のしつけ方

第七話 進化の系図

 

 

 

 

七竜軍の中枢の大貴族は、2公爵、1方伯、2侯爵、2伯爵からなっている。

領地の名前をつけてあげていくと、横浜公、名古屋公、札幌方伯、神戸侯、福岡侯、

広島伯、仙台伯となる。

盟主は、名目上、横浜公となっているが、実質は札幌方伯が取りまとめている。

唐突だが、皇国の国民的気質として、集団行動がとても苦手というのがある。集会は

とても好きだが、それぞれが勝手な時間を過ごしているので、結局、その集会によっ

てなにかが産まれることはない。

個々人が好きに力を発揮させるので、ユニークな発明は多々ある。だが、集団の規

律が重視される組織的行動、例えば、軍事行動などはとてつもなく苦手としている。

皇国の歴史を紐解いても、数万の軍勢が動くのはまれであり、ましてやそれが内乱で

起こったことなど皆無であった。

皇国気質の例外なのが札幌方伯領で、北からの移民が多く、シビル・ハーン国に

近い気質になっている。

つまりは、集団行動が得意で、個人的な力よりも組織としての力を重んじる。方伯自

身も母親がシビル・ハーン国の亡命貴族ということもあり、気質を皇国土着の貴族と

は異にしている。

これが七竜軍のリーダーシップを実質的に札幌方伯がとる所以だ。

今回の七竜の乱では、皇国軍と七竜軍あわせて12万の軍勢が動いているが、いまま

での対戦全4戦あわせても、死傷者はとてつもなく少ない。

皇国軍の崩れ方が早すぎるのと、七竜軍の追撃がほとんど行われていないせいだ。

そのかわり、捕虜はかなり多い。それもほとんどが司令部付きの高級幕僚達。

直進してくる方伯軍に狼狽えて後退を重ね、逃げ場を失って捕まるというのがパター

ン化していた。

敗戦を重ねて士気が落ち込み、手詰まりに陥っていた皇国軍だったが、今回のニセ

コ要塞出現によって方伯軍が引き上げるという事態を契機にし、勢いを取り戻そうとし

ていた。

 

「アウラ、情勢はどうなっている?」

だらしなくソファのひじ掛けに腰をおろし、水筒をあおっている方伯。

入室した情報部士官は、敬礼し、方伯の姿に眉を顰めながら何かを言おうとし、結

局、何も言わずに報告をはじめた。

 

「やはり皆様方の所にも要塞が現れています。

蔵王、富士、琵琶湖、淡路、石見、阿蘇、対馬です」

 

「対馬は伽耶連盟向けかな。読まれているわけだな」

 

「くえませんか、東京伯は」

 

「そうだな」

 

「そういえば、地代が入金されました」

 

「ふっ、店子は大事にしないとな。

郷土軍を出してニセコ要塞を囲め」

 

「しかし、郷土軍では、力が足りませんが」

 

「攻めとれとは言っていないよ、アウラ。

 囲んでいるだけでいい。力任せに押し通ろうとする部隊があれば、通してしまってもいい」

 

「しかし、それでは」

 

「息のかかった者を潜り込ませることができればだ。

猫の首に鈴がつけられるのならば、問題はない」

 

「はっ。・・・それと、方伯様」

 

「誰ぞ裏切ったか」

水筒が空になったようだが、侍従はいない。

ちょっと悲しそうな顔をしてテーブルに水筒を投げ、立ち上がる。

 

「函館子爵が皇女支持を表明して周辺の中小貴族に檄をとばしています」

 

「せっかちなことだな、我が軍はそんなに窮地に立ったように見えるか」

 

「横浜公や名古屋公がかなり浮き足だっております。

仙台伯は、蔵王要塞を攻略するのに躍起で我が軍の支援を求めています」

 

「灼け」

 

「はっ?」

 

「函館子爵の居城を灼いてしまえ。ウォルフならばできよう」

 

「確かにウォルフの灼熱のブレスならば。でも・・・悲しみます・・・」

 

「優しい守護竜か・・・そんなことだから・・・兄様は・・・」

 

「フラン様」

 

「アウラ」

窘めるような、怒ったような、悲しむような、押し殺した何かを感じさせる方伯の声。

 

「申し訳ありません、方伯様。

アウラ、ウォルフと共に征きます」

 

「アウラ、居城だけだ。街は残せ」

 

「はっ」

 

居城にも民間人は働いている。非戦闘員の被害を最小限に食い止めたからといって

それが免罪符になるわけではない。

 

「・・・わかってはいるがな、詮無いことだ」

 

背後に聞こえる方伯の呟きを頭の隅に置いて、アウラは、方伯家の守護竜の元へと

向かった。

 

                                 ○○○○○○○○○○○○

富嶽要塞

 

 

ここは富嶽要塞司令部兼神龍神殿本宮教王の間兼皇女私室兼座敷わらし(仮名)寝

室・・・後ろの方になるほどいかがわしくなってくる。

なんで、寝室になるんだ。

ニアとリトと座敷わらし(仮名)が豪奢なベッドの中心で丸くなって寝ている。

いつもならここに俺も加わっているんだけど・・・ふう。

目頭を軽く押さえて作業を再開する。

今造っているのは、蔵王要塞のミニチュア。

仙台伯が熱心にぶち壊すので、そのたびに造りなおして映世の地図に置いている。

仙台伯も意地になっているようだ。つきあわされている兵隊がかわいそうにな。

それにしても・・・

 

「どうしました?」

お茶を俺の目の前に置き、にこやかにキティが問いかかけてくる。ちなみにとてつもな

く苦いお茶なので、今のように頭をすっきりさせたい時には向く。単にキティのお茶を

煎れる腕が悪いだけのような気もするが、嬉しい気遣いだ。

 

「こほん」

 

「ああ、七竜軍は、というか札幌方伯は何を目的にしているのかなと思って」

 

「大貴族による大貴族のための統治ということでは。そのためには、皇女を手に入れ

るのが早道です」

 

「軍事行動で皇家を護る者を排除して後釜に自分が座ろうと・・・でもなあ」

 

「何か問題が?」

 

「横浜公とか名古屋公なら距離が近いからそう考えてもいいけど、札幌方伯の領地は

遠いだろう」

 

「単純に来るだけでも時間がかかるのに軍勢を率いてですものね」

 

「せっかくきといて、敗勢の皇軍をろくに追撃しなかったり、伯爵を野放しにしてたり、

徹底しなさすぎだろ」

 

「伯爵には、映世の地図がありますから」

 

「本当にそんなことを信じているのかい?」

 

「はっ?」

 

「いっちゃなんだけど、しょせんは人の造ったものだよ。

どこか遠い異国に持ち去られても効力がここに及ぶのかな?」

 

「・・・」

 

「効果範囲が無限ならば、軍勢を養うより、映世の地図の世界版を造った方がいいね」

 

「そのとおりです、主様。

映世の地図は、この地の龍脈に乗せて力を発動させますので、異国に置かれては、

効果の発揮しようがありません」

 

伯爵が俺に目隠ししようとしてたのか、手を微妙にのばしたままで背後から言った。

伯爵が「だ~れだ(はーと)」なんて言うのもイメージが違うが。

 

「伯爵のツガイは方伯に縁のある方だったとか・・・」

少し堅い声で呟くキティ。

 

「そのとおり。けれども、それで手心を加えるほどあの子は甘くはありませんよ」

 

「ですが・・・」

 

伯爵の言うとおりだろうな。聞いた限りの札幌方伯の人柄からするとあり得ない。

 

「あら、主様、ワタクシを信じていただけますのね」

 

それより弱みを握ってるんだろうなあという感じがするけど。

 

「・・・本当によく見てらっしゃいます」

 

「握ってるんですか?」

 

「ほほほほ

乙女の嗜みです」

 

「乙女」というのはつっこみ待ちかな、地雷かな。

まあ、いいか。

とりあえず、こちらの目的が果たせるように力をいれないとな。

俺は意識を切り替えて、作業に戻ろうかと思っていたが、伯爵はまだ話し続けている。

 

「あの子の・・・というかあの子の大事な人の目的は、世界を統一すること、人類を単

一民族にして恒久的平和を手にすること」

 

恒久的平和と単一民族化が重なるときな臭くなるね。他民族の虐殺に容易につながる。

 

「・・・主様達地球人は猿から進化したそうですわね」

 

それがどうしたの。

 

「我ら皇国人は猫から進化しました」

 

「・・・」

 

「プロシア公国人は犬から」

キティが言う。

 

「シビル・ハーンは狼、伽耶連盟は虎」

また伯爵が言う。

 

「龍は竜から」

神官のお姉さままでキタ。

 

「龍はこの世界で唯一、二足歩行を選ばなかった知的生命体ですわ」

 

地球でもいくつかの現世人類と違うヒト属が並列的に存在していた時代があったけ

ど、あくまでも猿から進化してきた進化系統樹の枝葉の違いでしかない近い存在だった。

猫科や犬科から並列的に知的生命体につながる進化なんてありえるのか。

 

「国によってあきらかに植物相も動物相も違います。地質年代も統一した基準を設け

ることができません」

 

「つまりどういうこと?」

 

「いくつかの異なる世界の断片を、パッチワークのように張り合わせたとしか思えない

のですわ、この世界は」

 

地球の民族問題どころじゃないわけだ。姿形は似通っているけど中身がまるで違うなんて。

 

「姿形が似通っていても交配は当然ながらできません、そのままでは」

 

 

「この世界では遺伝子操作が進んでいます。交配可能なまでに遺伝子を操作して体

外受精させることで、子供をつくることが可能となります」

 

「この技術を突き進めれば、子供の計画的な【生産】が可能になりますし、新たなる人

類を設計することも可能でしょう」

 

「つまりはそれが人類の単一民族化というわけか、でもそれじゃ」

 

「はい。ある特定の民族の虐殺ではなく、生産された新人類以外は無用。

全ての在来型人類が虐殺の対象というわけです」

 

なにか目眩がしてきた。

本当にそんなことをする気なのか。全てが虐殺の対象で自分はどうするんだ。自分の

存在さえ否定してしまうのか。なんのための恒久的平和なんだ。

 

「・・・あの子はとりあえず世界統一から始めるでしょう」

 

「とりあえず?」

 

「その方が簡単です。朝鮮半島の伽耶連盟の改良拡大版で世界を覆えばいいのです」

 

加盟国の政治形態は独裁制でも王制でも共和制でもいい。

警察・軍事・外交のみを連盟が行い、基本的に内政は加盟国の自由。各連盟加盟国

から評議員が選出されて議会が組織され、その評議員の投票により連盟総裁が決定

されて連盟政府が組閣される。

各国の評議員数は、人口とその幸福指数によって決定される。つまり悪政を行って人

民を虐げている国は発言権がなくなるということ。

って伯爵から聞いたけど・・・詳しすぎるね。

 

「ワタクシが入知恵しましたの」

 

をひ

 

「もちろん、直接にではありませんけどね」

 

ゆるやかに国どうしが連帯し、ごく自然に交配が進んで各民族が近縁種程度な存在

になっていけば、わざわざ新人類を設計生産をすることもなくなるか。

 

「あの子は優しい子ですから」

 

まだあったことがないけど、伯爵ってどんな人なんだろ。

人からの伝聞じゃなくて直接会ってみたい気がする。

 

「寝子様、伯爵は男性と聞いていますが、特にこだわりはないのですね」

 

話をするだけなら性別は関係ありません。交配のお相手は女性限定ですが。

 

「ただいま戻りました夏梅様」

 

「?」

 

ロイエンタールが入室してきたんだけど、なんで妹の名前を知ってるんだろう。

俺、言ったかな。

ミュウがロイエンタールの足を蹴って、しーとかやってる。

 

「失礼しました寝子様」

 

「ああ、伯爵のオモチャ箱はどうだった?

いいものがあったかい」

 

「音力戦車が使えそうですね。

ただ、生産台数がまだ少ないですが」

 

伯爵家は、代々発明家を輩出している。

その中でも音力戦車は伯爵一押しの発明品らしい。

水晶には音の波動を受けるとそれを力に換える性質がある。それを利用したのが音

力発電。

俺の世界での内燃機関の代わりに鳴き竜を車に乗せ、鳴き声を燃料代わりに音力発

電をしてモーターを回す。

鳴き竜は、手乗り龍の眷属で子犬並の体なのに鳴き声はジェットエンジンン並。従っ

て、車体に装甲を張っても十分な速度がでる。

なんでも時速90キロメートルはでるらしい。

攻撃方法としては、車体前面に衝角を設けて、敵戦車に体当たりを食らわせるコンセ

プトなんだけど・・・

全面を装甲で覆って、前方にだけ隙間をあけ、そこから外を見て運転する方式なの

で、死角がたくさんある。

速度を殺されてしまうと、歩兵に取り付かれてやっかいなことになりかねない。

敵戦車にぶつかって止まったときに囲まれてしまえば・・・考えたくない結果になるだろう。

かといって、味方の歩兵を車体に乗せるのは自殺行為だし・・・兵員輸送車タイプも造

るかな。

 

「攻撃方法は術師がつかえると思うの」

 

そうか、車外で術を発動させられれば問題ないのか。

どうにも魔術の無い世界で育っているからか、無意識に術の存在を排除しているみたいだ。

でも、ミュウ以外の術師を見てないけど、十分な人数はいるのかな。

そういえばミュウが術を使っている所も見てないけど、威力はどうなんだろう。

 

「火術を寝子に使ってもいいの」

 

いや遠慮しとく。

 

「人数は、修行中の者まで含めれば500人を越えますが、成人に達していて戦えるレ

ベルの術師、しかも強力な攻術を持つ者は50人程度です」

 

「少ないね」

 

「大貴族でも、強力な攻術の使い手は、数人程度抱えるだけです。護術や治術の使い

手は比較的多いですが」

 

それなのに50人抱えるといのも・・・そりゃ恨まれるか。

 

「他人事のようにおっしゃいますが、寝子様は龍神官も支配下におかれています。彼

女達が戦場に立つことは今まで例がありませんが、敵方の守護竜に対しての抑止力

になります」

 

教祖様と渡り合ってたんだものな。攻術師50人以上の恨まれ方になるかな。

まあ、とにかく。

 

「集合をかけておくの」

 

「攻撃手段は、術師メインで補助として突撃衝角か。後は鳴き竜と操縦席を遮音壁で

遮らないとならないし・・・通信手段はどうするか・・・」

 

「発光信号や発煙筒での連携だけでは細かい指揮がとれません」

 

「龍吼神官と龍耳神官をセットにすれば通信はとれますが」

 

相手側の龍につつぬけだよね。

おまけに乗組員が増えすぎだしな。とりあえずは、もう少し大集団になってから考える

かな。今は単純に前進後退の合図がわかるだけでいいとするか。

 

「通信機は開発中ですが、到達距離がまだ短いのと雑音がひどくて・・・

実用レベルではありませんの」

いまいち地味すぎて開発に力が入りませんし

という伯爵が小声で付け加えたのは聞かなかったことにしよう。

 

とにもかくにも俺が戦う目的としては、皇国内の混乱を納めて大貴族の力をなくしてニ

アを皇位につける、ということにとどめとくか。

新人類計画や世界連盟やらを目的におくのは、手に余るものな。

戦える人と武器と竜をそろえ、要塞を拠点に出撃を繰り返して大貴族を振り回す。

あわよくば各個撃破して戦力を削ぎたいな。

方伯がでてきた場合は、引き分けねらいの消耗戦をしかけるか。

にしても、やることが多い。

ためいきがでる。

またベッドに視線を向ける。

ニアとリトと座敷わらしがひとかたまりで寝返りをうっている。

ベッドにちょうどいい空間があいている。

どうにも我慢ができない、ちょっとだけ寝ようか。

 

「はい」

 

頬を染めた伯爵がいそいそと俺の首に手を巻き付けながら、ベッドに倒れ込む。

 

「ミュウも」

「あ、それでは私も」

 

ミュウとキティも俺にしがみついて寝に入る。

ちょっと窮屈だけどまあいいか。

みんなで雑魚寝しよ。ロイエンタールが仲間はずれだけど。

眠りに・・・落ちる・・・

 

 

 

つづく

六話へ        八話へ
 

 

 

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