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手乗り龍のしつけ方第六話 制服男子ドクトリン

2009-09-13 | 23:20

ここに掲載する物語は完全なるフィクションであり、実在するいかなる個人、団体とも関係ありません。

 

手乗り龍のしつけ方

第六話 制服男子ドクトリン

 

 

  

「う~ん」

悩んでいる声を出しているニア。

ちらちらこっちを見ながらなのは、かまってほしいからかな。

でもまあ、それどころではないしな。

 

「どうなのかな~」

ちょっと声が大きくなっている。

しかしまあ、ものすごくくだらない事で悩んでそうだしな。

 

今の俺の現状は、右手に伯爵、左手にミュウ。

前には伯爵のおさがりの浴衣を着たリトがはしゃいでいる。

 

「ネコママ、見て。綺麗よ~」

くるくる回って、楽しそうに。うんうん。可愛い可愛い。

 

「伯爵、どうもありがとうございます」

 

「主様、そんな他人行儀な言い方をなさらないで」

伯爵を枕に寝てしまったのが、何故か、伯爵の琴線に触れたらしく、朝からデレまくりになっている。

 

「ミュウも枕してたの」

そして、何故か、ミュウも対抗してるし。

 

それにしても、リトの左手を握って一緒にはしゃいでいる座敷わらしみたいな子は誰だろ?

いつからか、気づいたらリトと一緒にいたけど。

 

「リト、その子は誰だい?」

 

「仲良くなったの」

 

「ね~」「の~」

 

リトと座敷わらし(仮名)が向かい合って、お互いに右に頭を傾がせながら言う。

微妙に気があってないのかな。

 

「どっ、しょっ、かな~」

ニアのアピールが露骨になってきた、というか、近づきすぎだ。

俺たちが座っているテーブルとは別のテーブルに座っていたニアが、俺のすぐ後ろまで椅子を動かしてきてかまってオーラを発している。

しょうがないか、もうそろそろかまってあげよう。

 

「何をさっきから悩んでるんだ?」

 

「人龍と龍人とどっちかな?」

 

「何が?」

 

「寝子とリトよ。人にも龍にもなるんだから、そういうのって人龍って呼んだらいいのか、龍人って呼んだらいいのかって」

 

想像の斜め上をいくくだらなさだ。

もっと悩むことがあるだろうに、逆境の皇家の姫としては。

 

「だってほら、人魚っていうと下半身が魚で上半身が人でしょ。

でも、魚人っていうと頭が魚で下が人になってモンスター臭がひどくなるじゃない」

 

モンスター臭って、なんか加齢臭みたいな言い方だな。

 

「俺は俺、リトはリトだよ。

 それ以外の呼び名をつける必要はない」

 

「主様、主様と呼ぶことをお許しくださいませんの」

伯爵が潤んだ目で見上げてくる。

 

「我らが教王」

「我らの安息」

「美力の恩寵」

 

龍神官のお姉様方まで集まってきた。

俺は俺だけの立場でいられないということなのかな。

 

「ネコマ~マ」

「寝子」

伯爵とミュウを押し退けて、ニアとリトが手を絡ませてくる。

 

もう関わりすぎているからな。しょうがないか、最後までつきあおう。

どんな最後になるのかわからないけど。

みんなが笑顔になっていられるように、頑張るさ。

 

 

○○○○○○○○○○○○

要塞都市札幌

 

 

「方伯様」

 

「うん、帰ったか」

 

暗い室内。とても皇国の大貴族の本拠とは思えない、質素な執務室。

 

中央に来客を迎えるための応接セットがあり、その奥に大きな執務机がある。

部屋の右隅には場違いな巨大な水槽があり、何かが浮かんでいる。

 

札幌方伯は、北の大国、シビル・ハーン国に対峙するため、強大な権限と皇国最大の機甲軍を与えられている。

今回の反乱でも、方伯の軍が七竜軍の中核となっている。

 

執務机から水槽に向かいかけた足を止め、場違いに若い情報部士官の報告を聞くため、部屋の入り口に体を向ける方伯。

 

「皇女の帰還は確かです。ツガイと守護竜を連れ、東京伯に身を寄せております」

 

「あやつはまだ若いが先代よりもくえん女だな」

 

若いと言えば、方伯もまだ20代の後半で、今回の七竜の乱の参加貴族中、最年少だ。

長い髪を背中まで垂らし、常に着物を着ている。

左手に携えた水筒を、時々思い出したようにあおりながら報告を聞いている。

しばらくすると、水筒が空になったようでお替りを傍らの侍従に要求している。

 

「お酒はほどほどに・・・失礼いたしました」

 

「すまんな。これがないと頭が働かん」

 

「お体には気をつけていただきませんと。何もかもがこれからなのですし」

 

「そうだな。神龍神殿はどうだった」

 

「・・・跡形もありません。龍神官は全て皇女のツガイに従っております」

 

「皇女のツガイか。どんな男だ?」

 

「それが、女性なのです」

 

「何?ツガイなのだろう?」

 

「寝子と呼ばれております。守護竜にもママと呼ばれておりました」

 

「異例づくしのお姫様だな、まったく」

お替りを満たした水筒をまた口に運ぶ方伯。

水槽の方をふと見やり、顔をしかめる。

 

「あんなものの力は借りたくはないがな、まあ、とりあえずは正攻法で行くとしよう」

 

「では」

 

「出陣する」

 

「は」

敬礼の後、執務室から情報部士官が退室した。

 

まもなく、水槽の方から歓喜の意志が感じられた。

水槽に浮かぶモノが発している暗い歓喜。

恨みが晴らせるという歓喜。

 

「自分で晴らせるものならば喜んでもよいがな・・・

ふん」

侮蔑を込めて水槽からの歓喜の声を無視する。

 

「さて。お手並み拝見といこうか、ツガイ殿」

 

 

○○○○○○○○○○○○

東京伯領皇国軍統合幕僚会議

 

 

といっても参加メンバーはいつもとさして変わらず。

俺とニアとキティとミュウと伯爵とたまとリトと座敷わらし(仮名)とネオジオン総帥(コスプレ)。

ネオジオン総帥みたいな赤い軍服を着た高校生ぐらいの男が皇国軍上級大将のミュラー ・クゥーン・ロイエンタールだそう。金銀妖眼・・・右目が緑色、左目が青色のオッドアイで無造作に伸ばしているような蜂蜜色の頭をしてさっき噛んだ舌を痛そうに出している。

 

「おっちゅ君は皇国制服男子人気ナンバーワンなのです」

 

キティが説明してくれたが、別に人気度を説明してもらってもな。

おっちゅ君というのは、童顔でなめられまくりの彼は男らしい挨拶として「押忍」という言葉を常用しており、それをまた言えずに噛みまくって「おっちゅ」になってしまうことから来ている(初対面の挨拶で披露してもらった)。

二文字で噛む人って初めて見た、まったく。

 

「七竜軍のドクトリンは縦深作戦で成り立っております。

通常、3~4梯団を組んだ戦車部隊により構成した方伯軍が我が前線を破り、そのまま直進してまいります」

 

その勢いにおびえた司令部が退却して全軍敗走か。

 

「そのとおりです。司令官や高級幕僚も捕虜となり、残っている最上級者として私が全軍の指揮をとっております。

七竜軍に対抗しうる我が軍のドクトリンは・・・」

 

「エアランドバトルかな」

 

「何ですって?」

 

「前線の第一梯団だけでなく、後方の梯団に対しても攻撃を加える。

そうすれば、敵の第一梯団が前線を突破しても孤立してしまうことを恐れて直進してこない」

 

「考え方としては、そのとおりです。しかし、その方策がないのです」

 

「龍で空から攻撃すればいいだろう」

 

「どうやってよ」

 

爆撃は・・・できないか。この世界では飛び道具が発達していない。

弓矢を射ても風術によって吹き飛ばされるし、

そもそも攻撃魔法があるのに飛び道具を発明する必要性がない。

おまけに火薬も発明されていないものだから、当然ながら銃器も存在しない。

 

「それなら俺が・・・だめか」

 

「そう、威力がありすぎます」

 

例えていうなら、戦略核爆弾を前線に落とそうというようなもの。

戦術核爆弾並に適度な威力にしないと・・・

俺がでれば、向こうもそれぞれの龍を出すだろうし、考えるまでもない、無理だ。

 

「偵察に使用している飛竜がおります。火龍の眷属なので、小さな火炎を放射することはできます」

 

「うん、それは使えるな」

 

「ですが、数をそろえるのに時間がかかります」

 

それはそうか。乗り手も鍛えないとならないし・・・時間稼ぎね。

 

「これ、何をしやる」

伯爵が座敷わらしを叱っている。

映世の地図にいたずらをしていたようだ。

なにか、建物の模型みたいなのを富士山の麓に置こうとしている。

 

「わらわの寝所を再建するのじゃ」

 

「・・・・・・そうか」

映世の地図で起こした事は、実際の事象に反映される。

ならば・・・

 

 

○○○○○○○○○○○○

ニセコ要塞

 

 

この世界の戦車は、駝竜が牽いた車に三人の兵士が乗る形式をとっている。

内燃機関などないから、竜の力を利用していくしかない。

ただ、通常の戦車は二頭立てだが、方伯軍は、四頭立てでその分、兵員を多く積める。

駝竜は土竜の眷属で、ちょうど、駝鳥のような姿をしている。

けっこうな力持ちでスピードも70㎞/時を誇る。

それが2,000輛ほど集団で走っているのだから、かなりの迫力だ。

 

「方伯様」

 

「うん」

片手をあげて停止の信号を上げさせる。

2,000輛の戦車がまもなく停止した。

 

「あれは、いつからある?」

目の前のニセコが要塞と化している。

 

「今朝にはありませんでした。

さきほど先行偵察部隊から連絡がありまして、人の気配はないとのことです」

 

「突然に出現した空城か、くだらん。

だが、おもしろいことを考える」

 

「他の皆様方の所にも・・・」

 

「おそらくな。

引き上げるぞ」

 

「はっ・・・あの、占領されなくてよろしいのですか?」

 

「突然現れた要塞だぞ。占領したとたんに消えてしまったらどうする」

 

「はっ。了解いたしました」

 

「足並みをそろえるのにまた時間がかかるな。

まったくくえん女だ」

 

「これも東京伯が?」

 

「おそらくな。映世の地図を使ったのだろう。

まったく、叔父御も面倒事ばかり遺される」

 

頭を軽くふって水筒の中身をあおり、引き上げの合図を上げさせる。

しかしまあ、いやがらせぐらいはしていくか。

「東京伯に請求書を送っておけ」

 

「はっ?」

 

「勝手に領内に要塞を造られたのだ。地代ぐらいもらっておこう」

高らかに笑いながら帰還のための準備を急がせる。

 

皇国軍と七竜軍の全面的な対戦は、ひとまずは延期された。

 

 

 

つづく

五話へ        七話へ
 

 

 

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