スポンサーサイト

-------- | --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

手乗り龍のしつけ方 第二話 メイド服と割烹着

2009-06-08 | 21:37

ここに掲載されている物語は完全なるフィクションであり、実在するいかなる個人、団体とも関係ありません。

 

手乗り龍のしつけ方

第二話 メイド服と割烹着

 

 

 

 

 

目が覚めたら、そこは喫茶店だった・・・

・・・本当にそんなことがあったらよかったんだけど、そうはいかなかった。

目が覚めたら目の前には白刃が3本。

右手の方には小さな口からちっちゃな炎を一生懸命だして威嚇する手乗り龍。

左手の方にはすうすう寝息を立てている彼女。

白刃の先の方には手甲。その先には甲冑。

甲冑は顔面まで覆うタイプなので、男なのか女なのか年老いているのか若いのか、それさえわからず。

「矢間寝子です」

とりあえず通称で名乗ってみた。

・・・無言

「リト」

手乗り龍に呼びかける。眠りに落ちる寸前に決めた名前だ。

キョトンとした手乗り龍。自分の名前と理解したのか嬉しそうに鳴いて頭を俺の頬にすりよせてくる。

「彼女を守ってて」

リトを左手の彼女に押しやり、ついでに目の前の白刃に触れた。

・・・なんだこれ

簡単だった。真剣白刃取りは父親にやらされたが、こんなにも簡単にはへし折れたりしなかった。

三本の白刃の主の三体の甲冑のうち、二体は明らかにたじろいでいた。

それはそうだろう、見た目15歳ほどの女の子にしか見えない俺に剣をへし折られたのだから。

たじろいでいない1体は・・・気絶している・・・

信じられないくらいに弱い。

 

「伯爵の手のものかしら?」

いつのまにやら起き上がっていた彼女。

リトがえっちらおっちら彼女の肩から頭によじ登っている。

登頂成功。頭の上で羽を精一杯広げて威嚇するリト。

それとリンクするように手を広げる彼女。

「第一皇女として、ワタクシ、ニアは宣します。

 この身ある所が我が皇国。我が身ある限り皇国に滅びはありませぬ」

広げた手を胸の前で組んで身をよじる彼女。手慣れたポージングだ。

彼女の頭の上のリトも羽をたたんで身をよじろうとして・・・落ちた・・・

キュイキュッ

失敗したという風に鳴いてリトがまた彼女、ニアに登頂しだす。

俺はリトをひょいと抱えて立ち上がる。

「どうすればいい?」

本当にどうすればいいんだろう。ニアは歓迎される存在ではないのかもしれない。

伯爵というのが悪者なのかどうかもわからない。『我が身ある限り皇国に滅びはありませぬ』というのもやな考えだ。

民のことを考える為政者でなければ、どちらが国を代表する存在になっても同じことだろう。無意味だ。

・・・寝よう。

寝て起きれば今度こそ喫茶店に戻っているかもしれない。

俺はリトを胸に抱えてそのまま仰向けに寝転んだ。

「・・・あの」

ニアがあっけにとられているような声を出している。

甲冑二体がおそるおそる近づいてくる。

腕の中のリトははしゃいでいる。

俺は、眠りに・・・落ちる・・・

目が覚めたら・・・牢獄というのも覚悟していたのに、なぜかベッドの上。

それもかなり豪華な。隣にはリトがまんまるに丸くなって眠っている。

ニアは・・・ベッドの脇の椅子に座って俺の方を凄い目で睨んでいる。

見なかったことにする俺。

視線を右に逸らすと椅子ごと右に寄ってくるニア。

左に逸らすと椅子ごと左に寄ってくるニア。

・・・どのくらい繰り返せるかやってみようか・・・ともかく

「どうすればいい?」

彼女は呆れたように立ち上がる。

「アンタ、寝て起きれば、元の世界に戻れると思ってない?」

思っていたらどうだというのだろう。

「界渡りには成龍5体の術力が必要なの」

ならなんで俺はここに来たんだ。

疑問が顔に出ていたのだろうか、ニアが答える。

「アンタとワタシがツガイになったことで、卵が孵る。けれどもあの世界で龍が産まれることはできないのでこちらに渡った・・・ということでしょう」

世界には決まりがある・・・らしい。

その理によると俺がニアとツガイとなってこの世界に渡ることは必然だったと・・・

ばかばかしい。

運命なんて信じたりしない。

そんな都合がいいものがあるならば母も妹も死なずに済む、兄も俺と妹を混同するほど気がふれていない、そんな世界にこそ渡りたい。

こんな状態がなんで必然となる?俺がここにきた理由は、手乗り龍の卵が孵るから。

なら、俺がここにいる理由はなんだ?俺はなんのためにここにいつづけるんだ。

帰ることを望んではいけないとすれば、その理由はなんだ?

「アンタはワタシのツガイ。リトはワタシ達の守護竜」

現状認識を突き付けるニア。

 

「だからどうすればいい?」

「知らない」

ぷいっと横を向くニア。見かけによらずふくれた顔がずいぶんとかわいらしい。

案外、子供っぽいしぐさもできるようだ。

ふうっ

息をはく。体の余分な力が抜けていくと共に心も軽くなる。

「とりあえずは伯爵に会おう。ニアが悪者だとわかればその時に斃せばいい」

「アンタね~」

顔を真っ赤にして怒鳴るニア。

その剣幕に飛び起きるリト。

「冗談だよ」

 

しばらくニアと話をしてわかったのは、ツガイというのを夫婦と同じ意味に考えていたが、どうやら認識がずれていたらしいこと。

ツガイというのは皇家に伝わる秘儀で、龍を仲立ちにする一種の契約。

ただし、一度契約したら死ぬまで解除できないらしい。

そのかわり、皇族のツガイになった者は守護竜の術力により、元の数十倍の力を発揮できるらしい。

皇族はツガイの力で守られるというわけだ。

仲立ちになる龍は何でもいいというわけではなく、皇族によって相性があるらしい。

ニアは第一皇女なのに、一般的な火龍、水龍、雷龍、土竜、風龍、黒龍、白龍、黄金龍などとはまったく合わず、唯一合ったのが手乗り龍だったらしい。

卵はなんとか手に入ったものの孵化が進まず、大巫女のお告げで異界に渡ってツガイを求めることとした。

その相手が俺というわけだ。

 

「迷惑な」

「・・・アンタ」

「冗談だよ」

「冗談といえば済むと思ってる?」

 

なぜ俺は怒られているんだろう?

逆に怒っていい立場だよな、俺。

よ~し、怒るぞ、待ってろよ、ニア。

 

ガシ、ゴシ、ガシ

 

全然痛くないけど執拗に足を蹴られれば気が散る。

しかもまるで気配に気づかなかったし、この娘どこから来た?

みかけは12歳程度の女の子が一心不乱に俺のふくろはぎを蹴っている。

割烹着にそっくりな服装で、長い黒髪を大きなリボンで束ねている。

かなりかわいい娘だ。

 

「このヘタレ」

 

・・・でも口が悪い。

 

「ミュウ、往生際が悪いですよ。潔く負けを認めなさい」

 

こんどはメイド服の美女。20代後半ぐらいの微妙にお肌の曲がり角を意識しだすぐらいの・・・

・・・睨まれた。

 

「アンタ達、どうやって界渡りしてきたのよ。せっかく置き去りにできたと思ってたのに」

 

「姫様に置いてきぼりをくらうような者は、姫士隊にはおりません」

 

「術師隊にもいないの」

 

姫士・・・騎士なんだろうか?

まあ、その姫士隊の隊士服がメイド服で、術師隊の隊士服が割烹着なのかな。

 

「で、アンタ達はワタシが襲われてる所を見てても何もしなかったわけ?」

 

「賭けの清算で忙しかったの。それどころではなかったの」

薄い胸を堂々と反らしながらミュウが言い放つ。

「賭け?」

 

「姫様がいつ、寝子様がツガイであることに気づくかです。姫士隊の隊士の中では1日が一番人気でした。

 なにしろお告げにあった【場所】と【時】に寝子様はいたのですから」

「姫を舐めすぎなの。術師隊では1週間が一番人気だったの」

「アンタ等ね~」

 

「でも私とミュウは姫様をより深く理解しております」

「そうなの、ミュウは90日に張ったの」

「そして私は60日。ピタリ賞です」

 

「それもこれも、寝子がヘタレだからなの」

カシッ、ゴシッ、ガシッ

 

またミュウが俺を蹴りだす。

賭けに負けた腹いせに俺を蹴ってたのか・・・

俺、怒っていいよな・・・

 

ミュウの足が振り上げられるたびにそれに飛びつくようにしているリト。

もしかして、止めようとしてくれてるのかな。

 

とりあえず・・・寝ちゃおうかな。起きればまた状況が変わってるかもしれないし。

リトを胸に抱え上げてベッドに倒れこむ俺。

眠りに・・・落ちる・・・

 

 

 

つづく

 一話へ       三話へ

 

・ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。
ネット小説ランキング:「手乗り龍のしつけ方」に投票

HONなび:「手乗り龍のしつけ方」に投票

NEWVEL:「手乗り龍のしつけ方」に投票


スポンサーサイト

Theme : 自作連載小説
Genre : 小説・文学

Comment

Post a comment

Secret

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。