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手乗り龍のしつけ方 第十二話俺の事をコネコネしてくれ的なの禁止です

2010-07-10 | 11:29

ここに掲載する物語は完全なるフィクションであり、実在するいかなる個人、団体とも関係ありません。

 

手乗り龍のしつけ方

第十二話 俺の事をコネコネしてくれ的なの禁止です

 

 

 

 

 

 

 臨時工房(通称偶像の部屋)

 

 

「こんなところ、きとうはなかった」

 

「なによいきなり」

 

そう、いきなりだ。急展開だ。

魔改造品の奪い合いが一挙に解決する力技・・・品物がないなら自分で造れという形で争いは終結してしまった。

発注した魔改造品がなかなか届かないことに業を煮やしたニアが自力で魔改造品を造りあげていたことが判明し、争奪戦を一時中断して実見すれば、明らかに後から届いた発注品より上の出来映えだった。

ということで量産型魔改造品の生産が始まったというわけだ。

意外とニアの手先が器用だということは知っていたが、これほどとは思わなかった。

模型づくりの腕では、伯爵を1とすると1.3ぐらいだ。なんか大したことない差のようだが、俺を1とすると、伯爵は100でニアが130だ。

こうすると差も大きく感じるだろう(涙)

今の俺はというと、量産ラインの置かれたニアの寝室でモデルになっているのであります。

思わず口調まで変になるが、それもいたしかたあるまい。

俺本人がモデルになって造られていく魔改造品・・・もう改造ではないからオリジナルか・・・の完成品がベッド脇にどんどん並べられ、姫士隊の輜重部隊によって手際よく梱包されて運びだされていく。

そんな状態に何日間もぶっ通しでさらされたら、口調ぐらいおかしくなろうというものだ。

しかし、なんでまたニアはこれほど熱心なんだろうか?皇女の仕事にはこんなに熱心に取り組むことなどないのに。

日がな俺を・・・というか俺の似像をコネコネと作り上げている。

まあ、ニアのモチベーション持続理由はともかく、俺のモチベーションは最低ラインをさらに深く潜っている。自分の裸体像に囲まれている状態がいつまで続くんだろう・・・というか終わるのか、これ?

いっそのこと俺自身を型どりして生産した方が早くないか・・・本当にやられそうなので言わないけど。

「なんか、全国規模に展開するらしいわよ?」

 

何?

 

「地方の神殿で御神体がほしいっていってきてるらしいの」

 

偶像崇拝ですか。

 

「当局の追求も避けられますので、神龍神殿の布教活動の一環ということにしてましたら、それが広まってしまって」

 

・・・キティ。できあがった完成品を見比べてできのいいのを取っていってますね。

はじめは検品してるのかと思ってたけど。

 

「手作りですから微妙な差がありますし、コレクターとしては集めたくなるのです」

 

コレクターだったのですか。俺自身のパーツまで集め始めないでくださいね。

 

「そういえば、佐賀騎士団はどうしたんだ?」

 

「姫士隊との共同訓練をしています。佐賀騎士団には飛竜を操れる者がいないので、うちの連中が乗せていくしかありませんから、息をあわせるための訓練です」

 

「時間がかかりそうかな」

 

「かなり鍛えられているようですから、さほどの時間はいらないでしょう」

 

そうか。その訓練が終わって出撃するまではこの状況が続くのかな。

 

 

○○○○○○○○○○○○

横浜中華街月の兎亭

 

 

横浜公のディナーを中断させるのには相当な勇気がいる。

長らく秘書をしている男にとっても、緊張させられる瞬間だ。

主人の機嫌を少しでも読み間違えれば放り出されるどころではすまない。黄泉の國に送られてしまうかもしれない。

 

「緊急の報告です」

 

緊張のあまり滝のような汗を流して主人を窺っていた秘書の傍らから、まるで自然体の女性が現れて声をかける。

チャイナドレスのような体にぴったりとした服を着た30歳程度の知的な雰囲気の女性・・・名古屋公だ。

 

「うん?」

幸いなことに機嫌は悪くなかったようだ。

 

「緊急か・・・ワインはどうだ」

 

「いただきましょう」

 

横浜公の隣に腰をおろし、給仕の注ぐワインをゆっくりと味わう名古屋公。

 

「あ、あの公爵様・・・緊急の報告が」

秘書がおそるおそる口を挟む。

 

「シビル・ハーンが動き始めました」

横浜公の前の手つかずの料理をつまみながら名古屋公が語りはじめる。

 

「方伯はどうした」

 

「戦闘はありません。病魔に侵された仙台伯領への国際救助のため、フェンリル大隊を送る旨通知がありました」

 

「追い返せ」

 

「方伯が歓迎の意志を表明し、フェンリル大隊の輸送用に艦隊をウラジオに差し向けております。

ご存じのとおり、シビル・ハーン軍の渡洋能力は、かなり落ちておりますので」

 

「勝手なことを・・・ワクチンの用意はされているのか」

 

「フフ」

 

「仙台伯領にワクチンの備蓄はなかったはずだぞ」

 

「だからこそのフェンリルなのでしょう」

 

「浄化の炎か。本当に効果があるのか?」

 

「あるということになっていますね。実際の所はどうなのでしょう。何頭かフェンリルをとらえることができればおもしろそうですね」

 

「それが狙いか」

 

「そうかもしれません。ですが、どのような思惑があれ、方伯のやり口はベストではなくてもベターではあるでしょう」

 

「どういうことだ」

 

「このまま仙台伯領を放置した場合、姫様に大きな利を与えてしまいます」

 

「ふん。たかが仙台伯が弱体化した程度なにほどのことはない」

 

「神龍神殿の動きがとてもおもしろいのですよ。仙台伯領の領民の間に救世主が現れる旨噂を広め、極少数ながらワクチンを配布して女子供を救ってさえいます」

 

「まさか」

 

「そのまさかですね。自分達で多くを殺し、少数を救い、さらに多くの利を得る。飛竜の集結が始まっているそうですし、方伯単独では事態をひっくり返すのはむずかしいでしょう。

へたをすれば悪役とされてしまい、仙台伯領の領民と戦うことになりかねません」

 

「まさか」

 

「仙台伯とツガイの分だけワクチンを送ったのはまずかったですね」

 

「フン。家徴を持つ我ら由緒正しき貴族と領民の命が等価なわけがなかろう」

 

「その言葉、例えば、目の前で妻子をなすすべもなく看取った男に話したらどうなりましょうか」

 

「・・・・・・」

 

「時代が変わったということです。領民にとって我らが必ずしも必要がないのだということを知らしめるよう、龍神官が動き始めたのです」

 

「だからか」

 

「はい。姫様はシビル・ハーンの救助を受け入れるわけにはまいりません。必ず敵対することでしょう。領民を救いに来た部隊と敵対すれば、神龍神殿の工作の効果は雲散霧消というわけです」

 

「そううまく運ぶかな」

 

「運ばなければ方伯がなんとかするでしょう。

そのぐらいの知恵はある子ですよ」

 

「名古屋公は方伯に甘いな」

 

「気に入っておりますからね」

ワインの残りを飲み干して席を立つ名古屋公。

 

「おいしかったです」

ふわりと微笑んで店を出ていく名古屋公、傍らにいつの間にかツガイが現れて並ぶ。

 

「それにしても不愉快ではあるな。狼どもに我が国を自由に歩かせるとは」

名古屋公とそのツガイの後ろ姿が消えていくのにあわせて横浜公の機嫌が悪くなる。

 

「フェンリルの2、3頭はつかまえないと引き合わんな」

 

「はっ。手配をいたします」

 

 

○○○○○○○○○○○○

ウラジオ征東府

 

 

長い銀髪をひきずるように幼女が行く、その傍らを歩く20代後半ぐらいの女性が、ひきずられる幼女の髪を持ち上げて結い上げようとやっきになっている。

ただ、不器用なのかちっともうまくまとまらずに、また床に銀髪が落ちている。

 

「真韻お姉さま、ちょっとはじっとしていてくださいな、髪が結えません」

 

「夕亜、髪なぞかまわんでいい。ここは戦場ではないからな」

 

「戦場だなんて、怖いところにいかないでくださいね」

 

「仙台は、ひどい有様だと聞くぞ」

 

「それは、フェンリルがいるから大丈夫でしょう」

 

「病魔はな。我らの目的を達するには、場合によってはフランと戦うことになるかもしれんぞ」

 

「従姉妹殿と戦うのはいやです」

 

「お爺さまもフランを気に入ってるしな。

ただ、我らの業病を癒すにはニアの馬鹿を頼るしかない。

ホントに気に食わないがな」

 

「真韻お姉さまは、ニア様がお嫌いですの」

 

「様なぞつけんでいい。まったく、本来であれば、ニアに勝るくらいの抜群ボディで伴侶を手に入れて、子供がいてもおかしくない年齢なのだぞ、我は」

 

「真韻お姉さまは、4歴年で肉体年齢1歳しか年をとらず」

 

「夕亜は、1暦年で肉体年齢3歳の年をとると・・・王家に縁の女性の業とはいえ、このような体、捨てたくなるわ」

 

ドアを蹴破るように開けて、客間に入る。

ちょっと驚いた顔のアウラと平然と水筒を呷る札幌方伯。

目の前の茶器には手つかずだ。

 

「フラン、出したお茶をほったらかしで酒ばかりとは。お爺様のように肝臓を痛めてもしらんぞ」

 

「ご自慢のフェンリルが癒してくれんのか」

 

「肉体の損傷にはフェンリルは効かんわ」

 

「・・・悪いのか、シビル辺境伯は」

 

「大丈夫、酒の味がわかる間はな・・・とお爺様は仰られてるわ」

 

「私よりも長生きかもしれません、今のままでは」

 

「・・・夕亜」

 

「それが目的か・・・」

 

「方伯様」

 

「残念ながら、成長抑制剤と成長促進剤に関しては、皇家の技術力にかなわない」

 

「・・・フラン」

 

「かまわんよ。母の実家を見捨てるのも寝覚めが悪い。

それに仙台伯領の民が助かるのは確かだしな」

 

「まかせるがよい。確かに仙台伯領の民は助けよう。そのかわり、我と夕亜を助けるのは、フランとニアの馬鹿にまかせるぞ」

 

長い銀髪を振り上げ、薄い胸を反らして宣言する。

 

「ニア様へのつなぎはしよう。

 フェンリル大隊の出動準備は?」

 

「出来ておる。荷駄の積み込みも今夕には完了する。

出立は明日の朝になるかな」

 

「積み込みが完了したらすぐに出航する。

こうしている間に死んでいる者もいるのでな」

 

「わかった。フランも酔いを覚ましておけ、強行軍になるのだろう」

 

にっこり笑い、水筒を夕亜に放る札幌方伯。

そしてアウラを従えて退室していく。

 

 

○○○○○○○○○○○○

?????

 

 

「あらあらまあまあ、私の王様、たいへんたいへん」

 

「どうしたのだい、私の妃よ」

 

「空の月が一つなの。もう一つはどこかしら?」

 

「月が一つか・・・本当だね。それにいつもより大きいね。

ほら、私の妃、あの月をごらん。陰がなんだか兎に見えないかい」

 

「あらあら、私の王様、兎はあんなに大きくはありませんわ」

 

頭の痛くなるような会話が後ろで続いている。

そっと振り返ると40代ぐらいの夫婦・・・だろうな・・・えらく美形な男女が車道の真ん中を歩いている。

黒塗りのベンツがクラクションをならしまくっているのに、平然と会話を続けている。

 

「それにしても、私の妃よ、この綺麗な道や、夜だというのに昼間のような明かり・・・こんなに贅沢な邦が我が皇国にもあったとは驚きだな」

 

「私の王様、ここを皇都にいたしましょう。

ニアも喜ぶと思いますわ」

 

「それはよい考えだ、私の妃。ニアはキラキラしたものが好きだしな」

 

キラキラしたものが好きか。カラスのようなやつだな。自転車をゆっくりとこいであたりを見回していたせいで、この変な二人を見つけてしまった。

目的の妹はいまだに見つからないのに。

あんな変なのにかかわっている暇はないな。

前に向き直って自転車を走らせようとした時、もの凄い物音が後ろから起こった。

事故?二人はどうなった?

 

後ろを振り返ると、女性が右手を上から下に振り抜く形で

止まっていた。

傍らにはまっぷたつになったベンツ。

続いて、タクシーを左手で・・・

なんて・・・

思わず自転車を放り捨てて、かけよる

 

「私の妃よ。あい変わらず美しい技だ。でも怪我はしなかったかい。痛いところはないかい」

 

「ああ、私の王様、靴擦れで足が痛いのです。舐めてくださいますか」

 

靴擦れと今の一連の攻撃とは何の関係もないのに・・・

どういうやつだ

 

「ところで、私の妃よ」

「妃」の素足を舐めるのをやめて見上げる「王様」

 

「ああ、私の王様何ですの?舐めるのをやめちゃいけませんわ」

 

「ああ、ぺろぺろ その、ぺろぺろ 私の妃の手を、ぺろぺろ 取っている、ぺろぺろ その若者は、ぺろ「ええいうっとうしい」」

ガス

「妃」の手をとり観察しているのにいちいちうるさいやつだ。

「喋るか舐めるかどっちかにしろ」

 

「・・・・・・ぺろぺろぺろぺろ

 

よし。さて、観察の続きを・・・

ガシッ

頭を鷲掴みにされる。ものすごい力だ。

これは本気を出しても振り切れるかどうか。

「ナレはなんじゃ、誰の許しを得て我が背の君を蹴った」

凍るような声

さっきまでの「王様」への態度とまるで違う。

ツンデレか、この年でのツンデレはけっこうくるものがあるが。

 

「よけいな世話じゃ。ちび助どもにも散々言われておるわ」

 

・・・言われているのか。

 

「私の妃よ、そんな所が可愛いのだ。愛しているよ」

 

「私もですわ。私の王様、少々お待ちくださいね。

今、この者の頭をつぶします故」

 

「それはよした方がいいぞ、ガイドは必要だろう」

 

「ガイド?」

 

「あんたらここらへんの人じゃないだろう?」

 

きょとんとした顔が案外可愛いなこの人。

 

「ナレは自分の国の皇王も知らんのか?」

 

「この国に皇王はいないよ」

 

「私の妃よ。どうやらこの若者のいうとおりだね。

案内が必要だ」

 

「私の王様」

 

「ここは異界のようだよ」

 

離された「妃」の手は鱗に被われ、長いカギ爪がついていた。

手甲や武具としてのカギ爪ではない。生身だ。

そう、彼女は人間とは違う何かだ。

そして、なぜだか彼らが妹の行方につながっているような、そんな気がした。

 

「僕の名は矢間。可愛い妹を探して旅をしている」

我ながら完璧な自己紹介だ

 

「ナレはシスコンか、ロリコンか」

 

「私の妃よ、そっとしておいてあげなさい。

ではいこう」

 

「はい私の王様」

 

スタスタ歩き去る二人。

なにが悪かったのかわからないが、とりあえず逃がすわけにはいかんな。

 

僕は傍らのタクシー運転手に会釈をして二人の後を追う、ベンツの運転手も無事だったかなと考えながら。

 

 

つづく

十一話へ        十三話へ
 

 

 

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