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手乗り龍のしつけ方第八話 いもうと軍師

2009-11-02 | 22:56

ここに掲載する物語は完全なるフィクションであり、実在するいかなる個人、団体とも関係ありません。

 

手乗り龍のしつけ方

第八話 いもうと軍師

 

 

 

 

 

寝子達が寝てしばらくたった後、ロイエンタールがそっとベッドに近づく。

 

「夏梅様、お目覚めですか」

 

ベッドの上で寝子の姿をした人影がうごめく。

自分に絡まっていた伯爵の腕とミュウの足をそっとほどき、キティの胸のずれを直してあげて起きあがる人影。

よく見ると表情が普段の寝子とは変わっている。

瞳に強い意志と高い知性を宿している。

 

「ちー兄様も頑張ってますわね」

作業途中の映世の地図を見やって呟く。

 

「ロイエンタール、おはよう」

 

「おはようございます、夏梅様」

うれしげに、しっぽがあれば振り切れるぐらいに振っているだろう勢いで答えるロイエンタール。

 

「驟雨、翠雨、淫雨もおはよう」

 

「「「おはようございます、総主教様」」」

 

龍神官のお姉さま方もうれしげに答える。

 

「ちー兄様も遺伝子調整を知ったわけですし、もう少し大胆に行っても大丈夫でしょうね」

 

「是」

「諾」

「信徒と我らが朋輩を【大量生産】いたします」

 

「産み育てた信徒は順次、要塞に配備しなさい」

 

「諾」

 

「ロイエンタール、要塞への配備が完了したら、仙台伯を潰します。

その後、ニアお義姉さまを中心にした政権樹立を正式に宣言いたします」

 

「音力戦車の数が足りませんが」

 

「飛竜はどうです?」

 

「飛竜そのものは、300頭そろいますが、乗員が40名ほどしかおりません」

 

「姫士隊からそろいませんか、東槍姫」

 

ベッドの下から人の気配が生じ、メイド服を着た右手に2mほどの長槍を抱えた女性が現れる。

 

「竜を御することなど造作もありません、夏梅様。

方位の名を持つ者に集合をかけましょう」

 

「よろしくお願いしますね。

視師、仙台伯の動きはどうです?」

 

天井からベッドの上に音もなく降り立ち、ニアを踏んづけて歩み寄る11歳ほどの女の子。

迷彩色の割烹着を着ている。

 

「蔵王要塞を壊して喜んでる。守護竜が青森まででて札幌方伯を警戒している」

 

「なぜですの?」

 

「札幌方伯家の守護竜が出撃して函館子爵の居城を灼いた。

守護竜を殲滅戦に使うのははじめて」

 

「それで警戒をしていますの?守護竜まで出して?」

 

「そう。馬鹿なの」

 

「ありがとう。引き続き仙台伯と横浜公の動きを見ていてね。

東槍姫、10日後の朝に全力出撃をいたします。

西槍姫と南槍姫を指揮下におきなさい」

 

「はっ。警備を北槍姫に引き継ぎます」

 

「よろしくね。

それからロイエンタール、仙台伯爵家はリトに継がせます」

 

「あの、それは」

 

「できませんか」

 

「仙台伯爵家縁のものが納得しないのではないかと」

 

「名前だけでも残るのです。それで満足してもらわねばね」

 

「それでは」

 

「仙台伯領のものは、貴族も兵士も民も動物も植物も余さず消し去ります。

できますね、雨の名を持つ神官方」

 

「是」

「諾」

「信徒を放ちます」

 

「札幌方伯が函館子爵の城館を灼いたのならば、私は、仙台伯領を根切りにいたしましょう」

 

「その後は」

 

「要塞戦力を充実させて周辺貴族に対する圧力を強めます。

札幌方伯と単独で戦える状況をつくらねばなりません。

必要であれば、広島伯領も根切りにいたしましょう」

 

「夏梅様」

 

「人の命の価値をわからせる必要があります」

 

「だから殺すと」

 

「失ってみてわかることもあるのですよ、世界には」

 

言おうかどうしようか悩んでいるふうなロイエンタール。

おずおずと言葉を送り出す。

「お考え直しいただけませんか、夏梅様」

 

「フフ、冗談よ」

 

「えっ」

 

「だから冗談です。ただ、10日後の出撃は冗談ではありませんよ。

用意をよろしくね、ロイエンタール」

 

「はっ・・・徹夜になりますね」

 

「頑張ったらご褒美をさしあげますよ」

 

「はっ。それでは失礼いたします、夏梅様」

現金なくらい元気な足音を残して立ち去るロイエンタール。

それを苦笑混じりに見送る夏梅。

「ロイエンタールはよい方ですね、ほんとうに」

 

「是」

「教王様をよく支えられましょう」

 

「・・・そうね。

さて、視師、仙台伯が蔵王要塞にこだわる理由がわかりましたか?」

 

「近くに研究所がある。併設されて製造ラインも」

 

「何の研究ですの?」

 

「怪人。

人の遺伝子と竜の遺伝子と他の動植物の遺伝子を組み合わせて戦闘能力の高い人を産みだそうとしている」

 

「成功率はどの程度?」

 

「信徒を被検者として送り出しましたが、ほぼ4割です」

 

「竜の遺伝子との親和性が高い信徒で4割ですか。

一般の方ではほとんど成功していないのでしょうね」

 

「この前、死病をふりまく個体ができてしまって研究員が3割ほど亡くなる騒ぎがあった」

 

「それはそれは。驟雨」

 

「雪の名を持つ神官を派遣して病魔を押さえました。

同タイプの信徒を10体ほど生産済みです」

 

「研究所から逃げ出したことになさい」

 

「是」

「諾」

 

「仙台伯領は病魔に侵され、それを・・・」

 

「教王様が浄化なさる」

 

「そうね。それと驟雨、雲の名を持つ神官方を広島伯領に送り出しなさい。

布教をしていただきます」

 

「是」

「諾」

 

「フフ、極槍姫、統師、目覚めていますか」

 

「「はい、夏梅様」」

 

キティがベッドから立ち上がり、ミュウが寝た姿勢のまま転がってニアを乗り越え、ベッド下に落ちてくる。

 

「ごめんなさいね、あなた方を飛び越してお願いしてしまって」

 

「かまわないの」

「かまいません」

 

「そう、ありがとう。異論はないかしら?」

 

「・・・」

「寝子様がどうおっしゃるか」

 

「ちー兄様が全てを知る必要はないわ。人には向き不向きがあります。

ちー兄様には自分の想いのままにふるまってもらいたいの」

 

「泥を被るの?」

 

「泥と思ってはいませんよ。必要なことを必要なタイミングでなしているだけです」

 

「「異議はありません」」

 

「そう。あなた方にはこれまでどおりにふるまっていただきます。

ちー兄様をよく支えてね」

 

「「はい」」

 

「視師、札幌方伯を見ることはできるかしら?」

 

「駄目、霧がかかってしまっている」

 

「霧?」

 

「術に干渉して遠見を利かなくしてると思うの」

 

「敵方に強力な術師がいるということですか?」

 

「術師じゃないかもしれないの」

 

「八つ身に分かたれた教祖様がいるのかもしれません」

 

「そう。それもありましたね。

教祖の行方はわかりませんか?」

 

「否」

「非」

「悲」

 

「そう。やはり七竜軍の枝葉から切っていくしかなさそうですね。

極槍姫、統師、10日後にちょっとした戦闘を行います」

 

「「はい」」

 

「きっかけは、蔵王要塞近傍の研究所発見です。

非人道的な研究は、止めねばなりません。人は道具ではありませんからね」

 

ちょっとあきれたような雰囲気を醸し出すキティとミュウ。

どの口がそんな言葉を紡ぐのだろうという感じか。

 

「では、私は寝ますね」

 

「おやすみなさい、夏梅様」

 

 

○○○○○○○○○○○○

要塞都市札幌

 

 

目覚めの時間を迎え、ベッドから降り立つ札幌方伯。

傍らに眠るアウラを起こさないようにそっと降りたが、その配慮は無駄だったようで

フッと息をはく音とともにアウラが目覚めた。

「方伯様、おはようございます。

あっ、すぐにお茶のご用意を」

 

「いいよ、アウラ。今朝は気分がいい。

散歩を先にしよう」

 

「はい・・・あの方伯様・・・」

申し訳なさそうなアウラの声、傍らに通信文を持っている。

無粋な緊急連絡というやつだろう。

 

「横浜公からか、アウラ」

 

「はい。函館子爵の件について説明を求めています。

重大な問題なので、横浜にて会合を開く、そこで釈明するようにと」

 

「釈明ときたか」

 

「なお、迎えをよこすので、方伯の供人は不要。

方伯単身でくるようにとのことです」

 

「アウラ、代理でだれかを使わしておけ、使者の護衛として3万名を出撃させろ。

費用は旧函館子爵領を近隣の貴族に切り売りして用立てろ」

 

「・・・」

 

「横浜に首脳を集めるだと・・・

仙台伯の研究はうまくいっているのかな」

 

「では・・・」

 

「私の留守に我が軍を取り上げてまとめあげる気かな」

 

「誰も従いません」

 

「そのための研究成果なのだろう。

富士の動きはどうだ?」

 

「飛竜を集め始めているのと、人員を富士に集中させてきています」

 

「・・・横浜行きは延期だ。横浜公からの迎えは軟禁しておけ。

表向きは手厚い接待でな」

 

「いつまででしょう」

 

「富士に次の動きがでるまでだな」

 

散歩に行く気も失せたふうな方伯。喉が渇いたのか水筒の中に残った酒を一気に呷る。

いつもどおりに少しも酔ったふうに見えない。確かな足取りで寝室をでていく。

その方伯の後をアウラが慌てて追っていった。

 

 

○○○○○○○○○○○○

富嶽要塞

 

 

目が覚めると椅子に縛られたニアが泣きながら書類仕事をしていた。

まだ、夢を見ているのかな、俺。

 

よく見るとニアの手には細かな糸が絡まり、それで誰かに操られているようだ。

ニアの上空を見上げると、いた。

サイズの合ってない割烹着を着た18歳ぐらいのグラマーな女の子だ。

 

「傀儡師、術師隊の異端児なの」

 

主にスタイル面での異端かな。

 

「ノーコメントなの」

 

「出撃が近いので、姫様にご裁可いただく書類が一挙に増えたのです。

どうせめくら判ですが、リト様や座敷わらし殿にまで押させて、自分はさぼろうとなさいましたので」

 

それで操ってるのね。で、出撃って?

 

「寝ている寝子様の指示で、仙台伯が蔵王要塞攻略にこだわる理由を探っていました」

 

自動操縦時の俺の指示か・・・起きているときに疑問に思ってなかったことまで指示してくれるとは。

確かにこだわる理由か、何かありそうだな。

 

「蔵王要塞近くに研究所がありました。

自領の身よりのない領民や流れ者などを捕らえて人体実験を行っております」

 

「人体実験?」

 

「戦闘能力の高い、魔物のような生命体を作ろうとしているようです。

詳細はまだ掴めておりませんが、寝ている寝子様から攻撃準備指令が下りました」

 

「攻撃方法は?」

 

300頭の飛竜による空爆と姫士隊の降下襲撃による研究所の破壊を企図します」

 

「乗員はそろうのかい?」

「姫士隊のものが行います。

戦闘に必要であろうスキルはほぼ全員が取得しておりますので」

 

「姫士隊って何人ぐらいいるの?」

 

「直属のものは方位の職名を持たせていますが、それぞれが部下を抱えておりますので、正確な所はわかりません」

 

「それでいいの?」

 

「賃金は直属のものにしかだしていません。

それぞれの部下は賃金の中から抱えます。

大体、皆、副業で稼いでますので、問題にはなっておりませんね」

 

「いや、命令系統とかが・・・まあいいか。

指揮は誰がとるの?」

 

「東槍姫」

 

「はっ」

ベッドの下からメイド服を着たショートカットの体育会系なお姉さまがでてきた。

髪にカチューシャじゃなくて猫耳がついている。

本物かな?

さわさわ

「あんっ」

 

「敏感なのでさわらないようにしてください。

東槍姫チェシャです」

 

さわさわさわ

「あん、あん、にやあ」

腰がくだけた風に座り込むチェシャ。

本物だ・・・なぜに猫耳?

 

「家徴と申します。古い家系でよく行いますが、遺伝子操作で自家に特異な身体的特徴を持たせます。

猫耳であったりしっぽであったり牙であったり・・・」

 

「ほう」

 

「ちなみにキティの家系は微乳なの」

 

それでか。右胸がいつもの通りなサイズなのに、左胸がぺちゃなのがどうしてなのかと思ってたら。

詰め物がずれてたんだな。

 

「あ、あう」

 

一生懸命、詰め物を直しているキティ。

 

ニアが楽しそうに茶々をいれ、その代償に傀儡師のお嬢さんに高速押印を強制されている。

 

とにもかくにも戦いをはじめるわけだな。

 

もう一回寝なおそうかな。

 

伯爵の繊手が俺の首にまわる。そのままベッドに引き倒される。

 

もうちょっと眠ろう。

ニアの悲痛な叫びをバックに

眠りに・・・落ちる・・・

 

 

つづく

七話へ        九話へ
 

 

 

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