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夢の中へ

2009-06-12 | 16:26

「夢の中へ」

 

夜明けはまだなんだろうか。

カーテンの隙間からのぞく空は暗い。

でも、天気予報では、雨が降るともいっていたし…

もしかしたら、10時ぐらいいってるのかもしれない。

 

ベットからゆっくりとおりる。

彼女は出かけたのか…

それなら、やっぱりもう朝なんだろう。

彼女の寝ていたあとに手を触れてみる。

…冷たい

だいぶ前に出たようだ。

 

キッチンに行くと、テーブルの上に朝食の支度とメモ。

メモは読まずにそのまま丸めて捨てる。

どうせ書いてあることはいつもと同じだ。

 

『食事の支度をしてあるから温めて食べて。

 それから…』

 

たぶん、そこから先は書いてないだろう。

でも、何が書きたかったのかはわかる。

『病院にはこないで下さい。』

そういうことだろう。

 

彼女が何故、医学の道を選んだのかはわからない。

時々、その理由を考えることはある。でも、わからない…

彼女が3年前から主治医として担当している患者。

治る見込みも無い精神崩壊状態の女性を、彼女は自ら志願して担当している。

誰もが見放していたのに。

 

国立病院のその女性の病室を訪れると、いつも軽い眩暈を感じる。

ベットの上で起きあがっている女性。29歳になるはずだ…あのころのミサトさんと同じ。でも…違う。

僕の方を見ているのか見ていないのか…

顔をこちらに向けているが、視線をまったく感じない。

焦点のあってない虚ろな瞳を見ていられなくて目をそむけると、きまってベットの傍らに佇む彼女と目が合うことになる。

彼女は寂しそうな笑みを浮かべながらこう言う

『お見舞いご苦労様、シンジ』

 

 

 

カヲル君が最後の使徒だと誰が言い出したのか…

あれからも断続的に使徒の侵攻があった。

油断していた国連は、組織的な迎撃態勢がとれずに、いくつもの国が滅びる事態を招いた。

結局、NERVとゼーレの生き残りを中心に国連軍が再編され、使徒の撃退に成功した。

もちろん、通常兵器は何の役にも立たない。

中心になったのは、EVA初号機と弐号機だ。

零号機は、コアの回収が不可能だったため、諦められた。

 

僕と彼女は何回出撃したのか…

数えるのは止めてしまったのでわからない。

ただ、10年前をピークに突然、使徒の侵攻が止んでしまった。

理由がまったくわからないので組織を解体するわけにもいかないし、EVAを廃棄するわけにもいかなかった。

ただ、パイロットに関しては、また話が違うようだった。

 

つまり、彼女を生み出した環境が変わったために、彼女を廃棄処分にする意見も出てきた。

生命を作り出すことに、とても敬虔で保守的な意見を持つ人達からだ。

使徒が来襲しなくなり、EVAが厳重な解凍条件つきの凍結になってから、彼女の必要性はとても希薄になってしまったから、だから怖くなったのだろう。

神の領域を侵してしまったことに。

 

とても皮肉な状況だ。

今まで神の僕と闘っていたのも忘れて神を畏れ、自分達が嫌悪する生命を弄ぶ行為を自ら犯そうというのだから。

 

確かに彼女は人によって作られた。

でも、生きている。

誰よりも懸命に生きている。

 

僕は彼女を救うことにした。

とても簡単なことだ。

EVAを真に支配できるのは、僕だけなのだから…

その気になれば、他の人間を拒否するようにEVAに命令することだってできる。

 

彼等を説得することはとても容易かった。

今の世界が誰のものなのかを気付かせるだけでよいのだから。

 

詳しい事情を彼女は、知らないはずだった。

でも、誰かから聞いたのだろう…

彼女はお礼を言ってきた。

『碇様、命を助けていただいてありがとうございました。』

と…

 

彼女は僕の幼馴染。

だらしない幼馴染を叱咤するいつも元気な彼女。

親のカタキである使徒に勝つためにEVAにのる彼女。

大人の都合で作られた生命。それに気付かせず、戦いに駆り立てる為に創られた記憶。

その虚構が全て崩れた後の彼女は、とても虚ろだった。

死のうとしたのは、手首に巻かれた包帯を見ればわかる。

そして、そうとう手ひどく説教されたのか、顔にいくつもの黒ずんだ痣があった。

感謝の言葉を口に出してはいるが、本心と違うことはすぐにわかった。

僕は何も言わずに彼女を抱きしめ、そのまま二人でねむった。

 

それ以来、一緒に暮らしてはいるが、結婚はしていない。

ただ、子供はいる。アスミという女の子でとても彼女に…

昔の彼女に似て活発な子だ。

 

 

「パ~パ」

 

後ろから娘の声が…

アスカがパイロットに選ばれた頃と同じ年頃の娘。

おまけに、これまた同じようにEVAとシンクロする能力がある。

彼女がパイロットを完全に止めて、病院に勤めることができたのもそのせいだ。

 

「どうしたんだい?」

 

「マ~マがね。パ~パにこれ渡してって。」

 

テーブルのメモは、捨てられると思って予備というわけか…

娘が差し出したメモを読む。

 

「バ…」

 

何を考えている…

シンクロするだって…

しかも…

 

「アスミ、一緒にきなさい。」

 

「は~い」

 

 

旧NERV指令室

扉を開けると…

 

「遅かったか」

 

「あ、総司令…すみません。」

 

「マヤさん…じゃなくて…ええいもういい。

 マヤさん、どうなってるんです?」

 

「二人をEVAにシンクロさせて融合させてからサルベージする。

 その間に総司令の奥さんが治療をする手はずだったんですけど…」

 

「ですけど?」

 

「出てきたのが一人で…

 いくら探してもEVAの中には残ってないんです。」

 

というと…

出てきたのは…

…僕は、どちらであることを望んでいるんだろう?

 

「出てきたのは、もうすぐ来るはずです。」

 

微妙な違和感が。

『出てきたの』とはどういう言い方だろう?

 

「シュッ」

 

シュッ

 

「いい加減、このドア、擬音で開くの変えない?

 趣味悪いわよ。」

 

聞き覚えはあるけど…

妙に若い…というか幼く感じるが…

 

「あ~ら、無敵のシンジ様、というか旦那様かしら。

 娘まで仕込んでもらってるし。」

 

「ア、アスカ?」

 

「ふ、ふふん。アタシ以外誰だってのよ。

 15年も一緒に暮らしてるのに忘れちゃったわけ?」

 

「……」

 

「冗談よ…

 アンタの奥さんはアタシと溶け合って一つになったわ。

 こうなることは、予測してたみたいよ。」

 

「……」

 

「そんな顔しないの。

 彼女の想いもアタシの中にあるんだから…

 彼女としての記憶もあるわ。」

 

「キミは彼女じゃない。」

 

「…そう。」

 

「でも…待っていたんだ、アスカ。」

 

「シンジ」

 

僕の胸に飛び込んできたアスカを抱きしめながら考える…

確かに、アスカが戻るのを待っていた。

そうすれば、彼女が…幼馴染の彼女が戻ってくるかもしれなかったから…

自分のオリジナルを治療する彼女…どんな気持ちだったんだろう。

しかも今は、溶け合ってその存在まで消されて…

いくらクローンだからといって…

彼女は自分がクローンだということに引け目を感じていた。

だから、結婚は承知してくれなかったし、アスミを産むこともそうとうゴネタ。

結局は産んでくれたけど…

 

目が潤んできてしまった。

 

「シンジ、ワタシにあいたい?」

 

「あ?

 ああ。」

 

「だってさ。」

 

「マ~マ」       

「あらあら、アスミも来てたのね。」

 

「あ、明日香?

 どうして?」

 

「ワタシが何年パイロットしてたと思うんです?

 しかも、本来、同じものなんですから…

 アナタと同じくらいにはEVAを扱えますのよ。」

 

「どうして?」

 

「自信が…」

ドガッ            

 

「ぐちゃぐちゃ言ってんじゃないわよ。

 相変わらず細かいわね、アンタは。」

 

「ぽんぽん蹴るなよアスカ。

 相変わらず乱暴なんだから」

 

「あらあら、今日から夫婦なんですから仲良くね、二人とも。」

 

「「あ、明日香」」

 

「もちろん、ワタシも別れるつもりはありませんから。」

 

「よっし、その勝負受けた。」

 

そうなんだ。こういう性格なんだ、明日香はもともと。

強くて、明るくて、とても優しい…

創られた記憶なんて関係ない、僕の幼馴染で奥さんの明日香はこういう女性なんだから。

 

「マ~マがいっぱいだ~。」

 

「いっぱいじゃないわよ、アスミ。アスカママと明日香マ~マの二人だけ。

 そうでしょ?シンジ。」

 

「…はい」

 

「アスカママは、ちょっと無理あるわねえ。」

 

「何でよ」

 

「だって…」

 

そう、何故かアスカは若返ってる。

初めてあったころと同じぐらいの年恰好。

胸もそんなに…

って

 

「こら、二人とも、早く服を着ろ。

 僕以外の男に見せるな。」

 

「「やきもちやきね~。

 でも…どうせ脱ぐんだからこのままでいいわ。」」

 

「総司令、全員休憩に入りますので…ごゆっくり」

 

「マヤさん!」

 

「「ほら、アタシ(ワタシ)達だけよ。

 脱いでシンジ」」

 

「やめ…アスカ、明日香も…

 アスミが見てる…」

 

「「アスミ」」

 

「は~い」

 

「「子供は寝る時間よ。

 子守唄をうたってあげるから、ベッドで待っててね」」

 

「は~い」

 

「待って、アスミ。僕も帰るから…」

 

「「#$%&!“#$%&」」

 

「うわーーーー」

 

 

 

 

「ねえ、起きてる?」

 

「ええ」

 

「アタシ、ホントにここにいてもいいの?」

 

「シンジのこと好き?」

 

「そう思う。だってシンジだけだから…

 アタシを待っててくれたのは。」

 

「ワタシにとってもそう。

 創られたワタシにはシンジとアスミしかいないから。

 だから怖かった…」

 

「怖い?」

 

「ええ。アナタがアスカを待っているのはわかっていた。

 治ったらワタシは捨てられるのかもしれない。

 でも…アスカは治らなかった。

 このままだと、ワタシはずっと結果を恐れて待ちつづけなければならないから。」

 

「だからあんな無茶を…」

 

「結果オーライよ。それに内緒話に加わってんじゃない。

 イイ男は、女の内緒話は聞いてないフリしてきちんとフォローするもんよ。」

 

クスッ

 

「なんかおかしいこと言った?」

 

「いいや。大好きだよ、奥様方。」

 

「「シンジ」」

 

「アスカママ、明日香マ~マ、子守唄まだ?」

 

「「アスミ!!」」

 

指令室に急遽しつらえられたベットに親子4人。

いろんなことがうまくいきそうだと…そんな気持ちになれた。

アスカと明日香の子守唄に包まれ、まどろみはじめる。

腕の中のアスミはとっくに夢の中だ。

目覚めるのが楽しみなのは…そう初めてかもしれない。

二人の子守唄が続く中、僕もゆっくり夢の中へアスミを追っていった。

 

 

 

おしまい

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Theme : 二次創作
Genre : 小説・文学

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