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手乗り龍のしつけ方 第一話 ツガイ探してます

2009-06-07 | 11:33

ここに掲載されている物語は完全なるフィクションであり、実在するいかなる個人、団体とも関係ありません。

 

手乗り龍のしつけ方

第一話 ツガイ探してます

 

 

 

 

 

俺は今、非常に困っている。

さっきまで、楽しく・・・はないけれど、まあ、退屈しない程度に彼女と会話していたんだ。

 

俺の通っている大学に一番近い喫茶店の入り口から一番遠い席、その通路側が俺の指定席。

彼女は、いつも窓側に座る。

向かいにも席は空いているが、なぜか彼女と俺は並んで座る。

つきあっているわけではない。それどころか俺は彼女の名前すら知らない。

彼女は俺の大学でも有名な美女だそうだ。

自分で言ってるんだからそうなんだろう。

俺の好みからするともうちょっと、胸がつつましやかで、目がぱっちりして、声がアニメ声な方が・・・

それで「お兄ちゃん」って言ってもらえれば、ごはん三杯ぐらいいけそうな・・・

こう言うとロリコンといわれるか・・・

つまりは、彼女はそのまったく反対なクールな大人な美女で胸もおっきい、ミス俺の大学なのだ。

そんな彼女の名前を知らないわけがない。普通はそうなんだろう。

彼女が自己紹介もしてくれなかった(現在進行形)のは彼女自身にもそういう想いがあったんだろう。

俺はけっこう他人に気をつかうタイプだ。

親しげに話しかけてくる、しかも俺のあだ名で呼びかけてくる相手に、『あんた誰?』なんて言えない。

出会ったころなら言ってもよかったかもしれないが、今はもう言えまい。

 

ちょうど春も桜が散るころ、彼女がこの席に座る俺に話しかけてきたんだ。

「アンタ・・・寝子っていったっけ。ここ、ワタシの席なんだけど」

長い髪をかきあげてわずらわしげに首を振る彼女。

その動きにつれて大きな胸が揺れて、おおっという感じで・・・コほん

「ここ予約席だったのか?」

パンプスでガシガシ、テーブルの足をこづきながら彼女は言った。

「その席からどいてくれればいいの」

俺は窓際の席から通路側の席に体をずらした。

彼女はいったん俺の膝に座り、そして隣の窓際の席にお尻をずらして座りなおした。

これで今の俺達の位置関係がきまったわけだ。

 

俺は大学の講義にはわりと出席する方だ。

そして大学帰りにこの喫茶店でバームクーヘンを食べるのを日課としていた。

でも、彼女を見たのはその日が初めて・・・だと思う。

実をいうと、出席をするたけで、講義中の大半は寝て過ごしているもので、あまり自信がない。

あんまりしょっちゅう寝ているので、【寝子】なんてあだ名もつけられたし。

けっこう寝惚けながらも如才なく受け答えをしているらしく(数少ない友人談)、大学には、俺からすると初対面としか思えない知人がけっこういる。

その中にも彼女はいなかったはずだ。でも俺のあだ名を知っているし。

まあ、彼女の名前を知らなくてもそんなに不自由は感じないからいいか。

俺は物事にはあまりこだわらない。男の俺が寝子なんてあだ名をつけられて平然としていることからもわかるだろう。

母親ゆずりの女顔と三つ編み好きな兄が毎朝結ってくれる髪と妹のお下がりの服を着こなせる小柄な体からして違和感がまるでないあだ名・・・

中には俺の名前が本当に【寝子】だと思っている奴までいるという現実にも、まるでメゲタリシテいない・・・ホントさ

 

それはそうと彼女は、卵を持っている。唐突すぎたろうか。

俺もはじめはびっくりした。紫の卵なんて始めてみたし。

大きさは駝鳥の卵ほどというか恐竜の卵ほどといった方がよいのかもしれない。

彼女はそれをデンとテーブルの上に置いた。

いつもは大事に抱えているんだけど、そんな勢いで置いて大丈夫なんだろうか。

とにもかくにも彼女は話しだした。

「これね。拾ったの」

俺は相槌しかうてなかった。紫の卵なんて拾うか普通ってつっこむべきだったろうか・・・

「でね、調べたの」

調理の仕方ではないだろう・・・

「占いもしてもらって、最適な場所と時間と・・・」

占いって・・・

「ワタシとツガイになるものがここにいるからって・・・そのものに逢って、そしたらこの卵も孵るからって」

・・・

「その人とツガイになることで雛が産まれる。今日で60日ここに通ったのに・・・毎度毎度いるのはアンタだけ」

・・・・・・

「ワタシのツガイは現れず、卵も孵ることはなし・・・ね」

ふうっと溜息をついて卵に手を置く彼女。もしかして・・・

「俺の名前知ってる?」

「矢間寝子でしょ。山猫って冗談みたいだけど、似合ってるね。アンタ猫っぽいし」

・・・やっぱり彼女は、寝子が俺の本名だと思ってる・・・

訂正した方がいいだろうか・・・でも俺は他人に気をつかう以上に面倒事に巻き込まれるのを避けるタイプだ。

黙ってやり過ごそう。

 

「・・・食べないのか?」

彼女はめずらしく俺と同じくバームクーヘンを食べている。

外側からめくるようにして食べているので形が崩れていない。なかなか美しい食べ方だ。

「食べてるじゃない」

彼女は皿に手をのばし、テーブルにのっけた卵に肘をぶつけた。

俺はとっさに手をのばして卵を抑えた。

光が起こり、消えた。

そこで冒頭に戻るわけだ。

 

俺は今、非常に困っている。

妹のお下がりの服は濡れ、兄に結ってもらった髪は乱れている。

そして手の中の卵と彼女は・・・無事か。

いきなり喫茶店から川の中に投げ出されたら普通は溺れる。

俺はといえば、最近鈍っていたとはいえ、とっさに体が動かせるようには鍛えている。

なにしろ、朝起きたら、山奥に放置されていたというのはざらにあった・・・俺の父親の課す修行は意味不明なものが多かった。

サバイバルといえば聞こえはいいけど、なんで現代にこんな修行が必要なんだろうかというのがざらだった。

矢間流なんて誰も知らないような弱小流派、俺が継ぐとも言ってないのに、兄もいるのに後継ぎとして鍛えられた俺。

剣術覚えて飯が食えるかと反発した俺。

でも、修業は真面目に受けた俺。その成果としてわけのわからない状況でも生き残れている。

ありがとうおやじ・・・でいいんだろうか。

喫茶店どこだ・・・

・・・あたりは深い森、右手にさっき溺れていた川。喫茶店どころか人の気配もしない大自然。

しかも昼だったのが、夜になってるし。

さらには夜空に二つの月。地球の月より小さめなのがふたつ、夜の森に月光を投げかけている。

なにげなく、地球の月といったが、ここって違う星なのか、それともなにかの大異変で月がふたつになったのか。

「ここワタシの世界よ」

彼女が目を覚ましたらしい。

「どういうこと?」

・・・どうって

「なんでアンタがワタシのツガイなの?」

・・・・・・

黙っている俺に業を煮やして彼女の手が俺の・・・

・・・ぐにゅ・・・・・

「・・・いつからよ」

性転換なんてしてないからいつからも何もないな。

「もう遅いか。この子はアンタを認めちゃったし」

彼女の言葉と同時に卵が紫から赤に変わり、さらにはピンクに変わって・・・

パリン

・・・割れた。

キュッキュイ

・・・ちっちゃなドラゴン

子猫ぐらいの大きさの体に羽が生えて、鱗も眩く・・・卵より大きくなってないか。

・・・俺は他人に気をつかうタイプだからつっこまないけど。

「手乗り龍よ。皇家の守護竜のひとつ」

いろいろわからないことが多く、そのどれから聞いたらいいかも分からず。

手乗り龍がキュイキュイいいながら肩から頭によじ登ってくるし。

こういう処理不能な事態に陥った時は寝るに限る。

起きたらまた喫茶店に戻っているかもしれないし。

俺は手乗り龍を胸に抱えてそのまま仰向けに寝転んだ。

はしゃぐ龍にどんな名前をつけてあげようかと考えながら、眠りに・・・落ちる・・・

 

 

 

 つづく

 

               二話へ

 

 

 

 

 

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Theme : 自作連載小説
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